Nostradamus / Nikolo Kotzev (2001)

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ブルガリア出身のギタリスト、ニコロ・コツェフによるロック・オペラ「Nostradamus(ノストラダムス)」を収録した2枚組アルバムです。ノストラダムスと聞くと、日本では随分前にブームになった「ノストラダムスの大予言」を思い出しますが、まさにそのノストラダムスに関するストーリーをロック・オペラに仕立てた作品です。改めてググってみたところ、「ノストラダムス」とは「ノートルダム」のラテン語読みだそうで、「ノートルダム」は「我らの貴婦人」という意味のフランス語でで聖母マリアを指すのだそうです。「ノストラダムス」という響きに禍々しさを感じていましたが、なんだか普通で拍子抜けしました。

ニコロ・コツェフと言えばハードロック・プロジェクトBrazen Abbotで知られており、ニコロ・コツェフ名義の本作にもBrazen Abbotの常連ミュージシャンが多数参加しています。ロック・オペラということで、ボーカル陣にはそれぞれ役が振られていて、クレジットにはその配役が記されています。ジョー・リン・ターナーはノストラダムス、グレン・ヒューズはフランス王アンリ2世、ヨラン・エドマンが幽霊、ドゥギー・ホワイトが語り部、ヨルン・ランデが宗教裁判官、アランナ・マイルズがノストラダムスの妻アンヌ、サス・ジョーダンがフランス王妃カトリーヌ・ド・メディシスといった具合です。女性ボーカリスト二人は畑違いで筆者は知らない人でした。バンドはミック・ミカエリ(Key)、ジョン・レヴィン(B)、イアン・ホーグランド(Ds)のEurope組とニコロ・コツェフ自身です。

さて音のほうですが、基本的にはBrazen Abbot同様の、Deep PurpleやRainbowスタイルのオーソドックスなハード・ロックです。ただ、オーケストラや合唱団が加わったことによって、シンフォニック・メタルのような荘重なサウンドとなっているのが特徴。また、1曲の中で複数のボーカリストと合唱団が歌い分けているのも、ロック・オペラならでは面白みだと思います。筆者の耳に残ったのは宗教裁判官役ヨルン・ランデの圧倒的な歌唱。もともとこの役にはロニー・ジェイムス・ディオを予定していたらしいのですが、ヨルン・ランデはその代役を見事に務めています。それから、グレン・ヒューズの変幻自在のボーカルもやはり凄い。バンドの演奏はBrazen Abbotと同じくパーフェクト。というわけで完成度は恐ろしく高いです。ロック・オペラというものを、ライブやビデオではなくCDで音だけ聴くのは物足りないし、また全編通しで聴くのはちっょとしんどいのですが、たまにじっくり腰を据えて聴く価値のあるニコロ・コツェフ渾身の作品だと思います。

※youtubeにNostradamus2017年ブルガリア公演のトレイラー映像がありました。配役はCDとは違っていて、トーマス・ヴィクストロムやビョルン・ローディンが出ているようです。映像化されればCDよりよっぽど面白いと思います。

評価 ★★★★★
 ★★★★★ 傑作
 ★★★★☆ 秀作
 ★★★☆☆ 佳作
 ★★☆☆☆ 凡作
 ★☆☆☆☆ 駄作
評価の基準(筆者の好み)については評価の基準についてをご覧ください。

■Tracks
CD1
Act I
01. Overture (Instrumental)
02. Pieces Of A Dream
03. Desecration
04. Introduction
05. Home Again (Instrumental)
06. Henriette
07. Caught Up In A Rush
08. The Eagle
09. Plague
10. Inquisition
Act II
11. The King Will Die
12. I Don't Believe
13. Try To Live Again

CD2
01. War Of Religions
02. The Inquisitor's Rage
03. Chosen Man
Act III
04. World War II
05. World War III
06. Because Of You
07. The End Of The World, 3797
08. I'll Remember You
All music written by Nikolo Kotzev

■Personnel
[Cast Of Characters]
Anne Gemelle - Alannah Myles
Catherine, Queen Of France - Sass Jordan
Ghost - Göran Edman
Henry II, King Of France - Glenn Hughes
Inquisitor - Jørn Lande
Nostradamus - Joe Lynn Turner
Story Teller - Doogie White
The People - Choir
The Inquisition - Choir

Nikolo Kotzev - Guitars, Synths, Violin Solo on "Henriette", Percussion
Ian Haugland - Drums
John Levén - Bass
Mic Michaeli - Organ

Producer - Nikolo Kotzev



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テーマ : HR/HM
ジャンル : 音楽

1982 - 1992 / Europe (1993)

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Prisoners in Paradise 発表後に活動休止(実質解散)となったEurope(ヨーロッパ)ですが、その活動休止中の1993年にリリースされたベスト・アルバム1982 - 1992 はワールド・ワイドで発売され、本国スウェーデンやフランスではゴールド・ディスクを獲得するなど、このバンドの人気の根強さを示すこととなりました。

収録曲は解散前の5枚のオリジナル・アルバムからバランスよくセレクトされて年代順に並べられており、ベスト盤であると同時に、タイトルが示すように1982年から1992年までのEuropeの音楽の変遷を確かめられる企画盤となっています。また、オリジナル・アルバムを全て聴いてきているリスナーにとっても、何曲かのレア・トラックに興味を惹かれます。#8"On Broken Wings"は、シングルThe Final Countdown B面に収められた曲で、スムーズなサウンドとキャッチーなメロディはいかにもこの時期のEuropeらしい。#14"Prisoners In Paradise (Single Edit)"はタイトルどおりのシングル・バージョン。#15"I'll Cry For You (Acoustic Version)"はストックホルムでのアコースティック・ライブで、カントリー・テイストのカラっとした音には元バージョンとはまた違う味があります。#16"Sweet Love Child"はアルバム未収録の渋いバラードで、いわばこのアルバムの目玉。ジョーイ・テンペストの切々とした歌唱、キー・マルセロのよく歌うギター・ソロが秀逸で、これは名曲レベルでしょう。#17"Yesterday's News"はPrisoners in Paradise 日本盤ボーナス・トラックだったジミヘン風の曲。

なお、後年"The Final Countdown (2000 Edit)"を追加して1982 - 2000 というタイトルで再リリースもされています。この"2000 Edit"はくだらないダンス・ミックスで、このバンドのファンやHR/HMリスナーにとっては無用の長物以外の何物でもありません。

評価 ★★★★★
 ★★★★★ 傑作
 ★★★★☆ 秀作
 ★★★☆☆ 佳作
 ★★☆☆☆ 凡作
 ★☆☆☆☆ 駄作
評価の基準(筆者の好み)については評価の基準についてをご覧ください。

■Tracks
01. In the Future to Come (J. Tempest)
02. Seven Doors Hotel (J. Tempest)
03. Stormwind (J. Tempest)
04. Open Your Heart (J. Tempest)
05. Scream Of Anger (J. Tempest/M. Jacob)
06. Dreamer (J. Tempest)
07. The Final Countdown (J. Tempest)
08. On Broken Wings (J. Tempest)
09. Rock The Night (J. Tempest)
10. Carrie (J. Tempest/M. Michaeli)
11. Cherokee (J. Tempest)
12. Superstitious (J. Tempest)
13. Ready Or Not (J. Tempest)
14. Prisoners In Paradise (Single Edit) (J. Tempest)
15. I'll Cry For You (Acoustic Version) (J. Tempest/N. Graham)
16. Sweet Love Child (J. Tempest/K. Marcello/M. Michaeli)
17. Yesterday's News (J. Tempest/K. Marcello/J. Levén/I. Haugland/M. Michaeli)

■Personnel
Joey Tempest – Vocals, Acoustic Guitar (#1-6), Keyboardsr(#1-6)
John Norum – Guitar (#1-11)
Kee Marcello – Guitar (#12-17)
John Levén – Bass
Mic Michaeli – Keyboards (#7-17)
Tony Reno – Drums (#1-6)
Ian Haugland – Drums (#7-17)

Producer – Europe (#1, 2, 15), Leif Mases (#3-6), Kevin Elson (#7-11), Ron Nevison (#12, 13), Beau Hill (#14, 16, 17)





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テーマ : HR/HM
ジャンル : 音楽

Naive / Clockwise (1998)

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スウェーデンのボーカリスト、ベニー・セーデルベリが主宰するクロックワイズ(Clockwise)の2ndアルバムです。前作Nostalgia で、「北欧メロディック・メタルの理想像」ともいうべき、リリシズムと透明感に満ちた名曲の数々を披露してファンを泣いて喜ばせたベニー・セーデルベリ。彼がまたまたやってくれました。以前率いていたFortuneが音楽性を急変化させて躓いた、その同じ轍を見事に踏んでいます。このClockwiseでも唐突な路線転換を断行し、そしてズッこけました。2度目の躓きでメゲたのか、ベニーさんは以降シーンから姿を消してしまったようです。

ベニー・セーデルベリについて書くのはこれで最後と思われますので、彼がこれまでに残したアルバムを簡単に振り返っておきます。1992年にリリースされたFortuneのデビュー・アルバムMaking Gold は、愛すべきイモ臭さと瑞々しい叙情性が同居する北欧メタルの典型的サウンドで、日本のメロハー・リスナーに好意的に受け止められました。ところが、1994年の2ndアルバムCalling Spirits は、(ベニー・セーデルベリの言によれば)プロデュースを担当したブルース・ゴウディのアドバイスによって、当時流行していたダークなグランジ風のサウンドとなり、ファンをドン引きさせてしまいます。第3作目にしてラスト・アルバムとなったLord of Flies は(ベニー・セーデルベリの言によれば)メロディ重視の路線に戻ったはずでしたが、実際には1stとも2ndとも異なる70年代ハードロックにインスパイアーされたかのような音楽性を示していました。Deep Purple(1期・2期)、Captain Beyond、Hard Stuff、Strayといったバンドを想起させるソリッドでドライなサウンドはそれなりに魅力的でしたが、Making Gold で刷り込まれたバンド・イメージとはかけ離れたものだったため、ファンの支持を取り戻すことはできず、結果としてFortuneは活動停止状態となります。そして心機一転、曲作りからプロデュースまで全てベニー・セーデルベリ自身で手がけ、実質的なソロ作であるClockwise名義の1stアルバムNostalgia を1997年に発表します。この作品は、Making Gold の叙情的メロディにさらに磨きをかけつつ野暮ったさも残すという、ファンにはまさに堪えられない傑作となりました。そして、本作です。

全面的にフィーチャーされたエレクトーンじみたオルガン音に象徴的ですが、本作は1960年代ロック、特にサイケデリック・ロックを意識したサウンドとなっています。サウンド面だけでなく、メロディ・ラインやハーモニーにもサイケの香りが濃厚です。しかし全体に「なんちゃってサイケ」感が拭えない。同じ人間が作曲し歌っているので、過去作と類似している面は当然ありますが、どう聴いてもMaking GoldNostalgia の延長線上の音楽ではありません。本作もNostalgia 同様、ベニー・セーデルベリが作曲・アレンジ・プロデュースを単独でやりたいようにやっているわけで、それなのにどうしてこうも違う音楽になるのか。せめて、バンド名義とソロ名義に分けて別々の路線でやっていこうと考えないのか。同じ失敗をなんで繰り返すのか。北欧メタルの貴公子ならぬ奇行師と呼びたくなるよ、ベニーさん。

ただし、貶しておいて持ち上げるのも何ですが、ベニー・セーデルベリの意欲というかチャレンジ精神は高く評価したいと思っています。創成期以来すでに数十年が経過したロック・ミュージックにおける、ある時点での特徴的な音楽的イディオムを借用しつつ、独自の音楽を創造していこうとする姿勢は素晴らしいと思うのです。今流行っているもの、1年前に流行ったものに安直に便乗してコロコロ指向を変え、猫も杓子も同じような音楽を漫然とやっているよりよっぽどいい。Fortune時代のLord of Flies も、出てきた音は異なるものの、本作と共通した企図があったように思います。更に10年、20年と時間が経過した後、未来のリスナーがこのアルバムを「発掘」してどんな評価を下すのか、また、ついに発表されることのなかった"The Tales Of King Solitude"の3:3を想像しながら、ベニーさんにお別れを言うことにしましょう。

※これまで国内盤ライナーノーツに従って、Benny Söderbergを「ベニー・スドベリ」と表記してきましたが、スウェーデン人名Söderbergの一般的カタカナ表記にならって「ベニー・セーデルベリ」に改めます。

評価 ★★★★☆
 ★★★★★ 傑作
 ★★★★☆ 秀作
 ★★★☆☆ 佳作
 ★★☆☆☆ 凡作
 ★☆☆☆☆ 駄作
評価の基準(筆者の好み)については評価の基準についてをご覧ください。

■Tracks
01. Millennium Kick Off
02. Scenario From A Beach
03. Supernatural
04. Castle In The Clouds
05. Missing The Walrus
06. Too Late For Love
07. Forever Blue
08. Number One
09. The Tales Of King Solitude 2:3
All songs written and arranged by Benny Söderberg

■Personnel
Benny Söderberg - vocals, synthesizers
Fredrik Åkesson - electric and acoustic guitars
John Levén - bass
Ian Haugland - drums

Producer – Benny Söderberg



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テーマ : HR/HM
ジャンル : 音楽

Nostalgia / Clockwise (1997)

0216Nostalgia.jpg

スウェーデンのHR/HMバンド、フォーチュンのボーカリストだったベニー・セーデルベリが結成したプロジェクト、クロックワイズのデビュー作です。フォーチュンと言えば、その1stアルバムMaking Gold で日本の北欧メロディック・メタル・ファンの心をがっちり掴んだものの、2ndで音楽性をグランジ風に変化させて失速、いつのまにかシーンから消えたバンドでした。ベニー・セーデルベリはこのクロックワイズで、再びMaking Gold のような叙情的でメロディアスな路線に回帰しています。わざわざ別バンドにせずに、フォーチュンのままでやればいいのにと思いますが、フォーチュン名義では意地でも元の音楽性に戻したくなかったのでしょう。バンドのメンバーはベニー・セーデルベリの他、ギターにグローリーのヤン・グランウィック、リズム・セクションはヨーロッパのジョン・レヴィン(ba)、イアン・ホーグランド(ds)と強力な布陣。特に、ヤン・グランウィックのアグレッシヴでテクニカルなギターは、このアルバムに大きな魅力を付け加えています。なおソング・ライティングは全曲ベニー・セーデルベリで、プロデュースも彼自身が行なっています。

Making Gold の路線に戻ったと書きましたが、本作の楽曲・演奏面での充実振りはそれを更に上回ります。マイナー・キーの曲はクサいほど哀愁たっぷりに、メジャー・キーの曲はあくまで清清しく、そしてアルバム全体に清潔感と透明感が満ち満ちています。やればできるじゃん!これを待ってたんだよ、これを!タイトルも麗しいNostalgia 、邦題に至っては『北欧のノスタルジア』と来たもんだ。美しく神秘的なジャケもサウンドにピッタリ。もしかして、日本のレコード会社が「日本人の考える北欧メタルの理想像」を入れ知恵したのかと勘ぐりたくなるほど、一から十まで絵に描いたような北欧的叙情メタルです。少し上手くなっていたベニーさんのボーカルまで元に戻っているのが笑えます。でも、この野暮ったいボーカルこそ値千金なんですよ、好事家には。

■01. Wings of Joy
煌くキーボードに導かれてスタートする哀愁メロハー。モタモタしたボーカルとドラマチックなギター・ソロの対比が堪りません。
■02. This Blue World
クラシカルで気品溢れる北欧美旋律。本作の中でもトップクラスの楽曲です。ここでもヤン・グランウィックの切れ味鋭いギター・ソロが秀逸。
■03. Traveler
#2に続いての名曲連発です。フォーチュン、クロックワイズを通して、ベニー・セーデルベリのベストの作品の一つでしょう。美しくメランコリックなメロディにただただ溜め息です。
■04. Higher Ground
またまた名曲です。ヘヴィなヴァース部分から解き放たれるように、爽快で高揚感に満ちたコーラスへ、この展開が素晴らしい。
■05. Run the Race
本作中ではメタル色の強いスピード・チューン。クラシカルなギターとキーボードとは対照的に、歌メロはほとんど歌謡曲。日本人直撃だな、こりゃ。
■06. Angel Eyes
「ノスタルジー」という言葉がぴったりなクラシカルなバラードです。やけに暑苦しかったり、大げさだったりし過ぎるアメリカン・ロックのバラードとは全く異なる、冷たく透き通った感覚は北欧ならではのものだと思います。
■07. Changes
これは中森明菜か工藤静香のカバーですか?ってくらいに歌謡曲的。いや~堪りません。絶対日本の歌謡曲研究したでしょ、ベニーさん。ギターはジミヘン+リッチー+ジョージ・リンチって感じで凶暴。
■08. Looking for Love
珍しくハネものです。ややアメリカンで一時期のヨーロッパみたいですが、アルバム中のバリエーションとしては効果的です。
■09. Paradize
ロマンチックなインスト・テーマ、哀愁に満ちた歌メロが印象的。噴出するようなギターのパッセージがものすごくカッコいい。
■10. The Tales of King Solitude 1:3
トラッド・ミュージック的な味わいのある旋律が素晴らしい、エンディングにふさわしいバラード。ベニーさん、ほんとうにいいアルバム残しましたね。ありがとう。

★追記2017年2月
これまで国内盤ライナーノーツに従って、Benny Söderbergを「ベニー・スドベリ」と表記してきましたが、スウェーデン人名Söderbergの一般的カタカナ表記にならって「ベニー・セーデルベリ」に改めます。

評価 ★★★★★
 ★★★★★ 傑作
 ★★★★☆ 秀作
 ★★★☆☆ 佳作
 ★★☆☆☆ 凡作
 ★☆☆☆☆ 駄作
評価の基準(筆者の好み)については評価の基準についてをご覧ください。

■Personnel
Benny Söderberg - vocals, backing vocals, strings, keyboards
Jan Granwick - electric and acoustic guitars
John Levén - bass
Ian Haugland - drums

Producer – Benny Söderberg



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ジャンル : 音楽

Prisoners in Paradise / Europe (1991)

0213Prisoners in Paradise

スウェーデンを代表するHR/HMグループの一つであるヨーロッパの5枚目のアルバムです。アメリカ市場を意識した3rdThe Final Countdown の大ヒットで一躍スターダムにのし上がったヨーロッパは、ジョン・ノーラムの脱退という代償を払いながら、原点である北欧メタル・サウンドからの脱却を図り、更なる成功を目指して4ttOut of This World で徹底的なポップ化を推し進めました。しかし、狙いは外れてセールスはThe Final Countdown には及ばず、起死回生をかけて制作されたのが本作Prisoners in Paradise ということになります。結果は前作以上のセールス不振で、全米ゴールド・ディスク(50万枚)止まり。とは言っても、The Final Countdownの300万枚、Out of This World の100万枚と比べれば落ちてはいるけれど、今の感覚からすると結構売れてるじゃんって思いますが。いずれにしても、本作の不振、不評はついにバンドを解散に追い込むことになります。ご多分に漏れずヨーロッパも後に再結成しますが、筆者はどのバンドでも最初の解散でその生命は尽きたものと考えています。ほとんどのロック・バンドは再結成後の方が長続きしますが、それってつまり「大人の事情」を端的に示しているわけで。

閑話休題。ヨーロッパのラスト・アルバムとなったPrisoners in Paradise 、ポップ化を軌道修正して前作よりハードになっています。ボー・ヒルを起用してのサウンド・プロダクションも、前作の過剰なまでのゴージャス指向から一転して、緻密ではあるもののシンプルな音像。リリース当時、アメリカのバンドの音になってしまったという批判もあったようですが、むしろ前作よりアメリカ色は薄れているのではないかと感じます。1曲目の"All or Nothing"がモロLAメタルだったり、外部ライターが多数参加したりしているので、「アメリカナイズ」という評価があったのかもしれません。しかし、そもそもエリック・マーティンやフィオナ、ジム・ヴァランスなど外部ライターが関わっているのは、歌詞の一部、それと曲の一部をバンド・メンバーと共作しているというのがほとんどです。まあ、いずれにしてもジョーイ・テンペストが能天気に「ナ~ナ~ナナナ~」とか歌ったり、妙にブルージーな歌いまわしをするのに、拭いがたい違和感があるのは確かですが。

本作のリリースから4半世紀近く経っており、あらためてじっくり聴いてみれば、LAメタルっぽい数曲を除いて名曲・佳曲揃いだと筆者は思います。#6"Seventh Sign"、#11"'Til My Heart Beats Down Your Door"、#12."Girl from Lebanon"、これらはホワイトスネイク的なブリティッシュ・ハード風味でシビれます。ボブ・ディランやイアン・ハンターを思わせる歌いまわしの#7"Prisoners in Paradise"と#9"Homeland"もいい曲です。泥臭い#10"Got Your Mind in the Gutter"だって、過去のヨーロッパを忘れて聴けば十分カッコいい。何故かボーナス・トラック扱いの#13"Break Free"は出色の正統派ハードロックだし、#14" Yesterday's News"はジミヘン風リフとグルーヴが最高。全体に演奏も充実しており、特にキー・マルセロのギターはよく歌っています。名盤とまでは言えないにしても、優れたハードロック・アルバムであることは間違いないでしょう。90年代初頭アメリカでHR/HMそのものが売れなくなっていく状況の中、このバンドも栄光の頂点から一転して、苦戦を強いられることになり結局解散に至るわけで、なんとも同情を禁じえません。

評価 ★★★★☆
 ★★★★★ 傑作
 ★★★★☆ 秀作
 ★★★☆☆ 佳作
 ★★☆☆☆ 凡作
 ★☆☆☆☆ 駄作
評価の基準(筆者の好み)については評価の基準についてをご覧ください。

■Tracks
01. All or Nothing (Words by E. Martin/A. Pessis/J. Tempest, Music by J. Tempest)
02. Halfway to Heaven (Words and Music by J. Tempest/J. Vallance)
03. I'll Cry for You (Words and Music by J. Tempest/N. Graham)
04. Little Bit of Lovin (Words by J. Tempest, Music by J. Tempest/K. Marcello)
05. Talk to Me (Words by J. Tempest/M. Michaeli, Music by M. Michaeli/J. Tempest)
06. Seventh Sign (Words by J. Tempest, Music by K. Marcello/J. Tempest/M. Michaeli)
07. Prisoners in Paradise (Words and Music by J. Tempest)
08. Bad Blood (Words by J. Tempest/M. Michaeli, Music by K. Marcello/J. Tempest)
09. Homeland (Words by J. Tempest/M. Michaeli, Music by J. Tempest/M. Michaeli/K. Marcello)
10. Got Your Mind in the Gutter (Words by J. Tempest/B. Hill, Music by K. Marcello/B. Hill)
11. 'Til My Heart Beats Down Your Door (Words by B. McDonald/Fiona, Music by J. Tempest/M. Michaeli)
12. Girl from Lebanon (Words and Music by J. Tempest)
13. Break Free [Japanese Bonus Track] (Words by J. Tempest, Music by K. Marcello/J. Tempest)
14. Yesterday's News [Japanese Bonus Track] (Words by J. Tempest, Music by Europe/I. Haugland)

■Personnel
Joey Tempest – vocals
Kee Marcello – guitars
Mic Michaeli – keyboards
John Levén – bass
Ian Haugland – drums

Nate Winger – background vocals
Paul Winger – background vocals

Producer - Beau Hill



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